怠けているわけではない!?思春期の起立性調整障害とは

怠けているわけではない!?思春期の起立性調整障害とは

2025-06-24

── さっちゃん先生 インタビュー

皆さんは、朝起きられないと“怠け者”を混同していませんか?
思春期の子どもが朝なかなか起きられず、フラフラしていたり、学校に行けなかったり…。それを“やる気がない”と誤解してしまうことがあります。でも、もしかしたらそれは「起立性調節障害(OD)」という病気かもしれません。

今回は、起立性調節障害専門のヘルスケアアドバイザーとして活動する「さっちゃん先生」に、ODの正体と家庭での向き合い方について伺いました。

■「ただの怠け」とは違う、見えにくい病気

起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation)は、思春期に多く見られる自律神経の不調です。特に朝がつらく、立ち上がるとふらつく、めまい、動悸、倦怠感…といった症状が現れます。

「立ちくらみや突然の失神。実は、血流がうまく脳に届かないせいなんです」

とさっちゃん先生は語ります。特に思春期は、成長に多くの血液や栄養を必要とする時期。そこに睡眠不足や栄養不足が重なることで、自律神経が乱れやすくなるのです。

■娘の突然の倒れ込みから始まった支援の道

「活動のきっかけは、13年前に娘が制服を着たまま突然倒れたことでした」

さっちゃん先生の娘さんは、中学2年生のとき、起き上がれなくなり寝たきり状態に。病院でも原因が分からず、当時はまだ“起立性調節障害”の知名度も低く、医師からも「気のせいでは?」といった対応をされることも。

その経験を経て「同じように悩む親子が、少しでも早く気づいて回復できるように」と、薬局勤務の知識に加えて、睡眠健康指導士、薬膳コンサルタント、漢方カウンセラーなど多方面の資格を取得。SNSを中心に情報発信を続けています。

image2

■真面目・繊細・頑張り屋…そんな子こそ要注意

ODになりやすい子の特徴として多いのが「真面目で頑張りすぎるタイプ」や「感受性が強い子」。

「実は、そういう子は寝ている間も“交感神経”が働いていて、リラックスできていないんです」

また、スポーツをしている子でも、ミネラル不足などから発症するケースもあるといいます。

■「見えない」からこそ、誤解されやすい

「朝起きられない=怠けている」という誤解は根強く、親や学校、医療機関でも理解が追いつかないことがあります。

「特に10代前半は、自分の体調不良をうまく言葉にできないんです」

学校の遅刻・欠席が続くと、周囲から「甘えている」と言われてしまい、自分自身を責める子も少なくありません。

■家庭でできるサポートとは?

「無理に起こさない。でも、朝日や朝食で“体内時計”を整えてあげて」
ODは病気でありながら、生活習慣の工夫がとても重要。

・声かけは「おはよう」だけでもOK
・起きられるときはカーテンを開け、太陽の光を浴びる
・朝食は、何か一口でも口にできるとベスト

「プレッシャーをかけず、“できたこと”を認めてあげてください」

image3

■親自身が抱える“イライラ”とも向き合って

「親だってイライラしますよ。『なんで起きないの?』って」
でも、それは自然なこと。無理に抑え込まず、「どうすれば自分も少しラクになれるか」を考えることが大切。

「“今日も生きてくれてるだけでうれしい”って、私は娘に毎日伝えてました」

お子さんを見守るには、親自身が支えられる環境も必要です。

「1人で抱え込まず、誰かに頼ってください」

■傷ついた子にかけたい言葉は「何もしなくていいよ」

「娘が後になって教えてくれたんです。学校に行けない自分、家族に迷惑をかけてる自分がつらかったって」
無理に声をかけるより、「今まで通り」を意識すること。

・昼に起きてきても、いつも通り『おはよう』と挨拶をする
・食事や会話の中で“普通”を続ける

何気ない笑顔やぬくもりが、子どもにとっての安心になります。

image4

■今、悩んでいる親御さんへ

「解決する日は必ず来ます」

先が見えず、不安になる日々。でも、その中でも“今”を淡々と一緒に過ごすことで、親子の関係性はより深く、強くなっていきます。

「これはチャンスだと思えたらいいですね。子どもが元気になるだけでなく、親自身の健康や生き方も見直せる時間になると思います」

子どもの笑顔も、家族の穏やかな日常も、少しずつ取り戻せる。さっちゃん先生は、そう力強く語ってくれました。

■さいごに

思春期の子どもの「朝起きられない」「だるい」は、怠けではなく“起立性調節障害”かもしれません。大切なのは、責めずに「病気である」と理解し、いい意味で諦めること。そして安心できる環境で見守ること。
あなたのご家庭では、どう向き合っていらっしゃいますか?
まずは、何時に起きても優しく「おはよう」と声をかけてみましょう。

image5

さっちゃん先生

起立性調節障害専門のヘルスケアアドバイザー。

15年以上にわたり薬局で医薬品販売に携わりながら、娘の起立性調節障害をきっかけに、睡眠健康指導士・薬膳コンサルタント・漢方カウンセラーなど多岐にわたる資格を取得。

現在はSNSを中心に、体調不良に悩む子どもやその親をサポートする情報発信・講座活動を行っている。

「あの頃の私と同じようにすごく不安に思ってらっしゃるお母さんがいっぱいいるので、そのお母さんが遠回しないように協力をしたい。症状が軽いうちに正しく知れば、子どもたちはもっと楽になれる」との想いから、予防と理解の輪を広げる活動を続けている。

Instagram:@sachi_od_kiritsu

健康管理